7日後
平穏なときがあったかと思えば、変化する時は激流のようにあっという間に変わっていく。
しとしと降り注いだ雨が、高山を流れ、やがて集まって川となる。川は穏やかに、まるで流れなどないかのようにゆっくりと進む。ときには急斜面を勢いよく流れ、ときには分水し、ときには増水する。そして海へと戻り一つになる。
そのくり返し。
私は久しぶりに、お世話になっているkokoさんに会いに行った。kokoさんは私がこの地に転居して間もないころに、とある交流会で知り合った。観相学など色々なことを学んでいて、いつも私の応援をしてくれていた。
「そうそう、こんな手をしてたよね。」
と、もうずいぶん会ってないのに言葉の一つ一つがホントに優しい。
しばらく体調が悪かったときは連絡していなかったので、調子が悪くなった当初の話をしていると、ずいぶん昔のことのように感じ、こんなに元気になっている自分が嬉しくなった。
「私は、フリースクールの講師をしながら、本を書こうと思うんですけど。」
「それすごくいいと思う。どーせなら高校生だけじゃなく、小さい子にも範囲を広げて勉強だけじゃなく様々なことを支援できるフリースクールを自分でやってみたら?どこかに所属するより自分で作っていく方が合ってるんじゃない?周りがあなたについてきてくれるはずだから。」
半信半疑で占いに行ったりすると、こんな言葉をもらって「胡散臭いな。」と思うかもしれないが、私は単純なので自分の胸に温かいものがドシッと入ってきたように感じた。
実は「鬱が治る。」と確信する前段階の「これから治る気がする。」という自信が湧いたとき、他の方にも相談に行ったことがある。そこでもフリーランスがいいんじゃないかと言われていたのだ。なので私は、自分のやりたいこと、自分の持ち味についてずっと考えていたのだけれど、なかなか答えが見つからず、やっと「本を書きたい。」という思いが込み上げてきたところだった。
「フリースクールをやって本も書く。」
私はやりたいことを追加した。
両方やりたかったら、一つを犠牲にする必要はない!
その日の夕方、職場に体調の具合の報告と傷病手当の手続きに行った。
そして、今まで「う~ん。」と先延ばしにしていた今後の仕事復帰について聞かれたので「ここには戻ってきません。」と言ってきた。心臓がバクバクして、久しぶりにまた胃がキュッとなった。
「じゃあ退職日いつにする?」
早っ!
「アルバイトするには関係ないのでそちらの都合に合わせます。」
「じゃあ今月末ね。」
ということで、あと4日での退職が決まった。
ずっと背負っていた肩の荷が下りた気がした一方、「これで本当に自分の仕事を周りの人にやってもらうことになるんだぞ。いいのか。」という声も聞こえてきた。でも、「中途半端が一番迷惑だ。なにより、自分のやりたいことがあるのに周りを気にしてやらなかったら今までの自分と同じだ。」と言い聞かせた。
次の日、今度はフリースクール講師の面接があった。2つ応募していたが、2社とも同じ日になったのは有難かった。
久しぶりの電車に揺られ、一つ目の会場へ。
ドアを開けたらちょうど昼休み。わいわいガヤガヤしていて、自分が学生の頃を思い出した。しばらくして休憩が終わりの時間になるとキャンパス長が出てきた。生徒の中にいて全然気づかなかった。
「とっても真面目そうだし、うちの生徒と合うと思うよ。ちょうど頼みたかった仕事も適任者が来てくれて助かるよ。」
ということで、まだ正式に採用にはなっていないが、ほぼ採用してもらえそうで、次の面談の話もしてもらった。ただし、同業他社との掛けもちはNGだった。まぁ当たり前だよね。
自分の中ではもう決まっていたが、もちろん約束しているのでもう一つの会場へ。
生徒は帰ったあとだったのでわからないが、教室の規模や先生の雰囲気はだいぶ違った。直感なのか、既に色眼鏡で見てしまっているのか。「こっちはないな。」と思った。こちらも同業他社との掛けもちはNGなので、いずれかを選ばなくちゃいけない。どちらも不採用の可能性もあるんだけどね。
そんなこんなで、仕事の引き継ぎのことやら、保険の切り替えのことやらで7日前までには想定していなかった忙しさだった。自分で確信したら流れが次々と変わる。これってまさに引きよせ!?
ここひと月くらい調子の良かった頭痛や胃痛も再発した。やっぱりそう簡単にきれいさっぱりとはいかないか。